みなさん、医学部の授業といえばどのようなものを思い浮かべるでしょうか。
その一つに実習があるでしょう。

一言で実習といっても医学部の実習には様々なものがあります。

解剖実習、病院実習、地域医療体験実習、生理学実習…など様々です。

中でも解剖実習は医療系学部であっても医学部と歯学部の人しか経験が出来ない貴重な実習です。

今回はそんな解剖実習について、授業の内容など実態を現役医学部生が詳しく解説します。

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医学部の学習スケジュール

解剖実習について具体的に見ていく前に、医学部6年間でどのように勉強を進めていくのかを軽くおさらいしましょう。

1年 教養課程(+基礎医学導入)
2年 基礎医学全般
3年 臨床医学
4年 臨床医学+CBT/OSCE
5年 付属病院における臨床実習
6年 付属病院における臨床実習+医師国家試験

一般的に医学部は偶数年が忙しいと言われます。

留年する人が多く出るのは基礎医学が始まる2年生です。

基礎医学・臨床医学の違い

基礎医学、臨床医学と一言で言っても何をするのかイメージが付かない人がほとんどでしょう。

基礎医学とは「正常なヒトの体」について扱う学問です。

対して臨床医学とは「何かしら異常があるヒトの体」について扱う学問です。

そのため基礎医学においては疾患などを扱うことは稀で、基本的には私たち人間がなぜ生きていられるのかということについて勉強します。

勉強のスタイルとしては高校生物に非常に似ています。

細胞レベルでの体の仕組みを扱います。

対して臨床医学では疾患をメインに扱うため、内科・外科などのメジャー科の区分やその中でも細分化したマイナー科(眼科・耳鼻咽喉科・循環器内科など)の区分で勉強を進めます。

解剖実習の位置づけ

ではこのような医学部のカリキュラムの中で、解剖学習はどのような意味を持つのでしょうか。

これはいち医学生からの視点ですが、基礎医学と臨床医学を繋ぐものという捉え方が良いでしょう。

医学の勉強は二年生の時に始まりますが、始めは高校生物を少し応用させた内容であり基本的には暗記メインの学習になります。

実際に筋肉や骨の名前を覚えたりすることはもちろん、体の中で起きている化学反応や生理作用について学ぶためです。

正直に言うと基礎医学を勉強しているうちは少し退屈だなと思ったりすることもあります。

しかし解剖実習では実際にご遺体を解剖することで、今までは紙面で見ていた知識や図を身をもって体験することが出来ます。

医師になる覚悟や人体の神秘に触れることが出来、勉強に対するモチベーションがかなり上がります。

そのような意味で、座学やinputメインの基礎医学と実用的でoutputメインの臨床医学を繋ぐものであるといえます。

解剖学とは何か

そもそも解剖学とはどのような学問なのでしょうか。

ざっくりいうと人間の身体について物理的な視点から学ぶ学問と言えます。

「物理的な視点」というのは例えば骨と骨、筋肉と筋肉などの関係を化学的には捉えず、地理的にしか捉えないという意味です。

具体的にはどことどこがつながっていて、どの筋肉をどの神経が貫いているかということをメインに学びます。

分野としては三つに分かれます。

組織学肉眼解剖学神経解剖学です。

組織学

染色された画像を解析します。

各臓器を三次元的に様々な方向に切断しその切断面を分析することが学習のメインとなります。

イメージとは違うかもしれませんがこれも立派な解剖学です。

ドラマ「フラジャイル」を見たことがある人はイメージが付きやすいかもしれません。

肉眼解剖学

これが皆さんが想像する解剖学に最も近い学問でしょう。

首から下の人間の神経・骨・筋肉の構造について学びます。

また各臓器についても一つ一つ作用や働きについても押さえます。

ここで扱う神経や血管の種類は膨大な量に及びますが、それでも人体の1%の構造を理解したことにしかなりません。

神経解剖学

肉眼解剖学では扱わなかった頭頚部(首から上)についての理解を深めます。

脳の構造をメインで扱い、肉眼解剖学に比べて座学が多いです。

神経回路やその支配領域などに関して細かく覚える必要があり、各疾患からどの神経がどの高さで障害されているのかということについてまで局在診断を行う問題が出されることもあります。

二年生で学ぶ基礎医学で最も難しい科目の一つです。

解剖実習とは肉眼解剖学と神経解剖学の実習のことを指します。

実習内容・試験

では実際に解剖実習のスケジュールを見ていきましょう。

期間

大学によって実施される時期は様々ですが夏明けの9月から12月までの4か月間実施される場合が多いです。

班によって実習課題をこなすスピードがまちまちであり、遅い班であれば午後8時までかかるところもあります。

そのため多くの部活が任意練習に切り替わります。

スケジュール

まずは解剖学総論と骨学総論と呼ばれる座学の授業があります。

これらは肉眼解剖学分野の座学の授業であり、解剖学でよく使う単語や実習中にはあまり詳しく扱わない骨に関する授業があります。

これが終わった後に、予習期間として少し期間が空いたあと実習が始まります。

肉眼解剖学と神経解剖学の2分野を扱うと述べましたが、同時並行でやるわけではなく一つずつ分野をつぶしていくイメージで順番に扱っていきます(肉眼解剖学➡神経解剖学の順番が多いです)。

肉眼解剖学は範囲が広いのでその中でさらに2つの分野に分かれています。

胸部上肢と腹部下肢です。

前者では体の上半分、後者では体の下半分を扱います。

単元ごとに実習が終わると試験が行われます(後述)。

実習内容

解剖実習といっても、具体的に何を行うのかイメージを持てない人も多いと思います。

主にやることは決められた体の部位を実習書の手引きに従って解剖を進めていくことです。

実習の最初にご遺体が班ごとに割り当てられます。

そこから表皮を剥ぎ、脂肪組織や結合組織などをペアンを使って取り除き視野を確保します。

血管同士を分けたり、神経や筋肉の根元をかきわけるときも主にペアンを用います。

解剖というと外科手術のイメージに結びつけてメスを使うと思われがちですが、実際は一日中ペアンを手に持って作業しています。

同定すべき臓器・器官のリストがあり、時に解剖アトラスを参照しながらどんどんそれを見つけていきます。

基本的に解剖実習期間の時間割は朝実習室に集まって解剖、終わったら昼休み1時間を挟んで16時過ぎまで解剖というような解剖三昧の一日を過ごすことになります。

立ちっぱなしで作業を行うことも多く指の筋肉や眼を駆使する作業であるため、始めの二週間ほどは帰宅すると疲れがどっと出てきます。

一学年当たり実習中に担当教員は3名ほどしかいません。

そのため解剖実習では事前の予習がかなり大切になってきます。

参考書はもちろんですが最近ではARを使って人体の構造をスマートフォン上で捉えることが出来るアプリなどもあるのでそういったものも活用しながら十分に準備します。

実際教科書(アトラス)などは健康な人の人体の一例を表しているだけなのでご遺体が病気を患っていたりすると臓器の形や大きさ、血管の位置や順番がズレていることなどのあり同定作業ではとても苦戦します。

用具の費用

解剖用具は基本的に自分でそろえる必要があります。

ホルマリンは人体にとって有毒なので防毒マスクやキャップ、白衣、アームカバーなどを装着して体への付着を防ぎます。

また実習が進むにつれて白衣はホルマリンで黄色に着色していくため買い替える必要があります。

用具費用としては総額20000~25000円が見込まれます。

試験の内容と形式

試験については紙ベースの筆記試験と口頭試問が行われます。

筆記試験は全分野の実習が終わった後に肉眼解剖学と神経解剖学それぞれの科目に分けて行われます。

対して口頭試問は胸部上肢・腹部下肢・頭頚部など各部位ごとの解剖が終わるとその実習の最終日に行われることが多いです。

口頭試問では3人1グループと先生一人で行われます。

時間は1グループ1時間程度で教授に聞かれたことを分かる人が順番に答えていくという形式です。

口頭試問では実際に解剖で使用したご検体が用いられます。

中には「ここら辺説明して。」などとかなりアバウトな質問をしてくる先生もいて、答える側としてはかなり大変です。

医学部なのに口の中を見る!?

これは解剖実習を行った中で筆者が少し驚いた点でもあります。

口腔内組織や歯については歯科医師の専門分野であり、医師がそこに関わることはあまり多くありません。

しかし、解剖実習では中々ない貴重な機会ということで口の中や舌の構造についてもくまなく扱います。

実はこれに関しては、逆も同じで歯学部の解剖実習は代わりに全身を扱うんだとか…

分野にとらわれず横断的な学習ができるのは解剖学実習ならでは、かもしれませんね。

最後に

解剖学実習は決して楽ではありませんが、人体の神秘に触れることが出来るでしょう。

筆者も実際に心臓を手に持ったときは、その重みに言葉では表すことのできない感動を覚えました。

どの大学でも解剖学教室の先生は厳しい人が多い印象がありますが、教育熱心な先生ばかりなので熱量をぶつければその何倍もの熱量で返してくれる場合が多いです。

医学部受験生の皆さんは医学生にしか出来ない貴重な経験を楽しみにしておきましょう。

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