医学部の序列・ヒエラルキーとは?将来に与える影響も解説
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医学部受験で合格を勝ち取るためには、志望校選びのための情報収集がとても重要です。
医学部について情報収集をしていると、医学部の序列・ヒエラルキーに関する情報にたどり着くことがあります。
このコラムでは、医学部の序列・ヒエラルキーの正体と、卒業後の将来に与える影響などについて詳しく確認していきます。
納得して目指せる志望校を選ぶための参考にしてくださいね。
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医学部の序列・ヒエラルキーとは
実際に、医学部には序列・ヒエラルキーと言われるものが存在しています。
入学試験の難易度を示す偏差値ではなく、設立された年代や医学業界への貢献度に応じて、医学部の序列・ヒエラルキーが決まっています。
そのため、合格難易度と序列・ヒエラルキーは必ずしも一致しないということを理解しておきましょう。
それでは、なぜ医学部の序列が存在しているのでしょうか。
医学部設立の時代や背景を知ることが、その疑問にアプローチする手段です。
かつて、医学部は東京大のみに存在していました。
東京大医学部の卒業生の尽力により、北海道大・東北大・名古屋大・京都大・大阪大・九州大に医学部が設立されました。
その後、戦時の医師不足や医療の地域格差といった社会情勢の中で、さらに多数の医学部が設立されていきました。
このような設立の時代や背景を含め、それぞれの医学部がもたらした医学業界への貢献度が、医学部の序列・ヒエラルキーとして表現されています。
序列やヒエラルキーは将来に影響するのか?
続いては、医学部の序列・ヒエラルキーが将来に影響するかどうかを確認しましょう。
「就職」「年収」「ネットワーク」の3つのポイントについて整理していきます。
就職のしやすさ
医学部の序列・ヒエラルキーによる就職難易度に大きな差はありません。
医師としてのキャリアをスタートするには、まず臨床研修を行うための病院を探す必要があります。
医師の就職活動では、希望の病院の就職試験を受けた後に「医師臨床研修マッチング」というシステムへ登録します。
このシステムにより臨床研修先、つまり就職先が決まる仕組みになっています。
令和3年度のデータによると、希望した病院とマッチングした医師は全体の91.7%となっています。
続いて、マッチング者における自大学出身者の割合を確認していきます。
序列・ヒエラルキーが高いとされる旧帝大医学部の付属病院をいくつか例に挙げます。
■大学病院の自大学出身者採用の割合と他大学出身者採用数(令和3年度)
病院名 | 自大学出身者の割合 | 他大学出身者採用数(採用先大学数) |
東京大学医学部附属病院 | 15.2% | 82名(47大学) |
大阪大学医学部附属病院 | 31.5% | 57名(23大学) |
いずれも自大学出身者の割合が半数を大きく下回っています。
さらに、数多くの大学医学部から医師を採用していることが分かり、序列・ヒエラルキーに関係なく就職できていることが理解できます。
以上より、医学部の序列・ヒエラルキーは就職に影響が大きくないと考えられます。
年収への影響
就職のしやすさと同様、卒業した医学部の序列・ヒエラルキーが年収へ及ぼす影響は少ないと考えて良いでしょう。
医師の年収に大きく影響を与える要因は、病院の運営形態や診療規模、そして診療科などです。
年収への影響を考慮する場合、特にどのような診療科の医師を目指すか検討することがおすすめです。
ネットワーク
医学部の序列・ヒエラルキーが唯一影響するのが、その医学部の持つネットワークの広さではないでしょうか。
医学業界での歴史が長く貢献が大きいことが序列・ヒエラルキーの高さに紐づいているためです。
例えば「私立御三家」と言われる医学部は序列・ヒエラルキーが高く、その1つである慶応義塾大学医学部は、国内外に独自のネットワークを構築していることがウリです。
序列・ヒエラルキーの高さからくる医学部のネットワークの広さから、医学部生時代からの学びが充実して活躍の幅が広がる可能性は十分にあります。
医学部の序列・ヒエラルキー
本章では、医学部の序列・ヒエラルキーについて具体的に紹介していきます。
諸説ある中で、一般的な序列・ヒエラルキーは以下の通りです。
それぞれの特徴と該当する大学を確認していきましょう。
■医学部の序列・ヒエラルキー
① | 旧帝大 |
② | 私立御三家 |
③ | 旧制医科大 |
④ | 新制八医科大 |
⑤ | 旧設医科大 |
⑥ | 新設医科大 |
⑦ | 21世紀新設医科大 |
①旧帝大
日本で最も歴史が長く、1886~1939年に設立されたのが旧帝大医学部です。
東京大を始め、北海道大・東北大・名古屋大・京都大・大阪大・九州大の計7大が属しています。
偏差値は67.5~75.0以上で、序列と同様に入学難易度も最高峰の医学部群です。
また、学びの環境が整っていることが、研究に充てられる「科学研究費」から確認できます。
令和4年度を例に、科学研究費助成事業の大学別採択数を見てみると、旧帝大が上位7位を独占しています。
医師としての学びを深めるには最も適した環境と言えます。
②私立御三家
慶応義塾大・東京慈恵会医科大・日本医科大の3大学が属しています。
旧帝大と同様に歴史が長く、設立は1920~1926年です。
グローバルなネットワークやICT活用教育などそれぞれの医学部に大きな特長があり、歴史の長さを活かしつつ新たな取り組みを広げていることが分かります。
また、私立大の中ではトップクラスの難易度を誇る3大は、偏差値67.5~75.0に位置付けています。
名実ともに私立医学部の代表格と言える3大学です。
関連コラム:私立医学部の御三家とは?新御三家・四天王も紹介
③旧制医科大
1919年の大学令の施行により、医科大学として認可された大学群です。
国立の千葉大、新潟大、金沢大、岡山大、長崎大、熊本大に加え、公立の京都府立医科大が該当します。
偏差値65.0~70.0に付けているため、全医学部では中上位ほどの合格難易度です。
旧制医科大学の特徴としては、附属病院における自大学出身者採用の割合の高さが挙げられます。
令和4年度を例にあげると、金沢大で82.1%、京都府立医科大で54.0%、新潟大で46.7%などが代表で、例年自大学出身者の割合が高くなっています。
医学部で学んだ卒業生が、そのまま附属病院で働くルートが人気と言えます。
④新制八医科大
戦時中の医師不足という問題を受け、1946~1948年に設立された医学部を持つ大学群です。
弘前大、群馬大、信州大、鳥取大、徳島大、広島大、鹿児島大、東京医科歯科大の8大学で構成されます。
この大学群は偏差値の範囲がかなり広く、大学ごとに難易度が大きく異なります。
全医学部で見ても入学難易度が高いのは、偏差値70.0~72.5の東京医科歯科大です。
旧帝大医学部と同等の偏差値を誇り、序列・ヒエラルキーに関係なく人気の高い大学です。
他の大学の多くは偏差値62.5~67.5の範囲に位置付けています。
⑤旧設医科大
設立が1947~1950年の「旧設」と言われる医学部です。
以下の計20大学が属しています。
なお、日本大は1942年に設立されていますが、この大学群にまとめる場合があります。
国公立:神戸大、岐阜大、三重大、山口大、横浜市立大、名古屋市立大、札幌医科大、福島県立医科大、大阪市立大、奈良県立医科大、和歌山県立医科大
私立:順天堂大、昭和大、東京医科大、大阪医科大、久留米大、岩手医科大、関西医科大、東京女子医科大、東邦大、日本大
旧設医科大の偏差値を確認してみると、国公立は神戸大・大阪市立大・大阪市立大などの67.5~70.0を筆頭に幅広く分布しています。
私立においても順天堂大の偏差値67.5~70.0から久留米大の62.5~65.0までさまざまな難易度の医学部があります。
なお、同じ序列・ヒエラルキーの大学群に属していても、入学難易度に大きな差が出ています。
⑥新設医科大
新設医科大とは、その名の通り比較的新しい医学部を持つ大学群です。
1970年代以降の「医療の地域格差問題」を受けて設立されたという背景があります。
属する大学等は以下のとおりです。
国立:秋田大、山形大、筑波大、富山大、福井大、山梨大、島根大、香川大、愛媛大、高知大、佐賀大、大分大、宮崎大、琉球大、旭川医科大、浜松医科大、滋賀医科大
私立:自治医科大、獨協医科大、埼玉医科大、北里大、杏林大、帝京大、東海大、聖マリアンナ医科大、金沢医科大、愛知医科大、藤田医科大、近畿大、兵庫医科大、川崎医科大、福岡大、産業医科大
大学校:防衛医科大学校
令和2年度の科学研究費助成事業の大学別採択数で旧帝大に次ぐ第8位の筑波大や、産業医としての道を極めるための産業医科大、防衛省職員として医師を目指せる防衛医科大学校といった特徴的な大学・大学校が属しています。
序列・ヒエラルキーに関係なく、独特の魅力を持つ医学部が数多い大学群です。
⑦21世紀新設医科大
最も歴史が短いのが、21世紀に入って新設された計2大学です。
2016年に医学部を設立した東北医科薬科大は、震災を経て東北の地域医療への貢献を目的としています。
2017年には、国際医療福祉大が医学部を設立しました。
「21世紀の医師に必要な能力」を身につけるカリキュラムを用意するなど、新設医学部ならではのウリがあります。
新設医学部は歴史が浅いため序列・ヒエラルキーで最下位に付けていますが、それぞれが明確な目的を持った医学部であると言えるでしょう。
序列の高い医学部を目指すべきなのか?
医学部の序列・ヒエラルキーを確認しましたが、本章では「序列の高い医学部を目指すべきか?」というテーマを考えます。
結論として、必ずしも序列・ヒエラルキーの高さで志望校選びをする必要はありません。
医学部の志望校選びをするポイントは以下2点です。
学びたいことを学べるかどうか
令和5年度時点で、日本全国には計82大学に医学部が設置されています。
それぞれの医学部の設立背景が、医師育成の環境やカリキュラムに大きく影響しています。
自分の学びを実現できる医学部が必ずあるはずなので、その軸を大切にして志望校選びをしてみてください。
自分が「行きたい」と思うかどうか
医学部受験を成功させるには、多くの時間とたゆまぬ努力が必要になることは言うまでもありません。
最も大切なポイントは、自分が心から「この医学部に行きたい!」と思えるかどうかを基準にすることです。
もちろん「序列・ヒエラルキーが高いから行きたい」というのもひとつの考え方です。
しかし、序列・ヒエラルキーだけにとらわれず、カリキュラムや立地環境を含めて考えてみるのもおすすめです。
大切な時間の多くを割き、難関と言われる試験を突破する強い意志は、心から納得できる志望校を選ぶところからスタートしています。
まとめ
このコラムでは、医学部の序列・ヒエラルキーについて確認しました。
医学部合格を掴み取るためには、序列・ヒエラルキーを知るだけでなく、就職や年収に与える影響や志望校選びの考え方を理解することが大切です。
納得できる志望校選びをすることが、医学部合格に向けた第一歩です。
医学部の序列・ヒエラルキーは、志望校選びの参考情報のひとつにすぎません。
行きたい医学部についてじっくりと情報収集して、納得の志望校を決定しましょう。
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▶資料請求して特典を受け取るこの記事の監修者 山崎 敬太
筑波大学人間学群心理学類 卒業。
大学卒業後、英語講師として、難関大・医学部・看護学部・看護学校の志望者計300名以上に指導経験をもつ。
その後、小中高生向けキャリア教育事業の施設長として、生徒やご家族へ進路の相談援助を実施。
現在は医学部・看護学部・看護学校受験向けメディアのライターとしても活動中。
医学部や看護学部・看護学校の受験生に向けて、役立つ入試情報等を発信。